「夢で見たあの子のために」 第5話 感想

先日「夢で見たあの子のために」 第5話を読みました。

以下ネタバレ注意

感想

今回は冒頭から恵南の過去の回想シーンから始まりました。

恵南が5歳の頃、恵南の父親が主婦を殺害する事件を起こしました。

事件の詳細はほとんど語られていないのですが、よっぽど世間の注目を集める事件だったのか? あるいは恵南の父親が恨みを持たれている人間だったのか? 犯人の家族(恵南とその母親)への誹謗中傷や嫌がらせがかなり酷かったようです。

ある日の夜、恵南の母親は、

「恵南・・・忘れないで

罪を犯したら 必ず罰が下るの

・・・大切な人も巻き込んで・・・」

という言葉を残して、首を吊って自殺してしまいました。

そういえば前回、千里が二人組の男に火を付けようとしていたのを止めた後、
恵南は千里に、「忘れないで 『罪を犯したら報いは必ずある』・・・って」とほとんど同じセリフを言っていました。

どうやら恵南はこの「父親が起こした殺人事件」と「母親の自殺(最後に残した言葉)」に深い影響を受けてしまっているようです。

「罪を犯したら必ず罰が下る」という「因果応報」の道徳観自体はよくある言葉だと思うのですが・・・

恵南の母親がこの時言い残した言葉は、事件を起こした夫に対する恨みの言葉であって、娘に道徳を説こうとしていたわけではないんでしょうね。

「罰が下る」と自分で言っているんだから、その「罰」から娘を守ろうとするのであればいい母親だと思うんですけど・・・

夫に裏切られ世間の迫害にさらされ追い詰められていたんでしょうけど、娘を守ることを放棄して、まるで当てつけか何かのように、夫への恨みの言葉を残して、幼い恵南の目の前で首を吊って死んでしまいました。

(この母親が言い残した言葉も「負の連鎖」というか、人生にかけられた呪いのような感じがしますね・・・)。

父は殺人犯として捕まり、母は死んでしまったので、児童養護施設「もみじ園」で暮らすことになった恵南。
ちょうど同じ頃、千里も「もみじ園」に入所したようです。

「もみじ園」で暮らすようになってからも、恵南は「殺人犯の子」として他の入所者の子供たちから嫌がらせを受け一人ぼっちになっていました。

大事にしていた本(「せかいの国 ものしり百科」)に落書きされページを破かれたり、ベッドに水をかけられ寝られなくなったり。

しかし、怒ることもなく無抵抗で我慢するだけの恵南。
母親の最後の言葉に影響を受けているので、自分が「罰」を受けるのは当然の報いだと思うようになっているんでしょうか?
親が起こした犯罪で「罪悪感」を植え付けられ卑屈な性格になりつつあった、ということでしょうかね。

そんな一人ぼっちだった恵南でしたが・・・
ある時、千里が恵南が大事にしていた本の破られていたページを取り返して来てくれました。

「それ大事なモンなんだろ」と言って、破かれて奪われていた本のページを取り返して来てくれた千里。
犯人に対する怒りと復讐しか頭にないような千里が、恵南のためにわざわざ取り返して来てくれたというのも何か意外な感じがしましたね。

これは多分、「大事なものを奪われる」ということに対する怒りだった? ということでしょうかね。

千里は、犯人に双子の片割れ(一登)を奪われたことで犯人を憎悪しているので、恵南が大事にしていた本のページを奪われたことが自分が受けた事件とオーバーラップして、力ずくで大事なものを奪った悪ガキに対する怒りに火が付いた、という感じでしょうか。

「殺人犯の子」である恵南は、「家族を殺された」事件の被害者である千里は「自分のことを嫌っている」と思っていました。

恵南:「千里くんは あたしのこと・・・きらいなんじゃないの?」

千里:「あー ・・・・ おまえのとうちゃん 人殺しなんだってな

でもおまえはべつに 悪くないだろ」

もしかすると千里は恵南にさほど興味があるわけでもなく、自分がいいことをしたとも思っていないかもしれませんが(復讐で頭が一杯の人のようなので)、

「おまえはべつに悪くないだろ」と千里に言ってもらえたことが、恵南にとって救いになったようです。

(それでも、恵南は一人ぼっちだった子供の頃と同じように現在でも床に座って眠っているので、親が起こした事件による「負の連鎖」からまだ完全には解放されたわけではないようですが・・・)。

それと今回、ストーリーにまたも大きな動きが。

第1話で、千里の悪友グループに殴られ金を奪われていた「板倉」くんが、ついに再登場。

いかにもモブキャラ風で、ただのやられ役かと思いきや謎の権力を使って千里たちへの復讐に動き出しました。

千里は「板倉」をカモにしたつもりでしが、どうやら初めから板倉は千里たちを罠にはめるつもりだったようです。

5~6人の「本職」のお兄さんたちを引き連れて、店にたむろしていた千里の悪友たちはボコられ、メガネの悪友「瀬島」がどこかに連れ去られてしまいました。

この板倉が何者なのか? 何が目的で千里をはめたのか? 意外な展開になってきました。

ところで、5歳の頃、千里は本を奪われた恵南のために本のページを取り返してあげていました。
それは多分、自分が双子の兄を奪われたために、同じように大事なものを奪った悪ガキたちに怒りを感じたから、なのかなと思いました。

しかし、そんなある意味いい奴? ぽいエピソードが今回語られていたのですが、それでいて、板倉君をはじめ、誰かから暴力で金を奪うということには、罪悪感も自分の行いに対する矛盾も感じていない様子。

弱い相手から金を奪っていましたが、今回は板倉君が実は強者であることが判明し、逆襲されていた千里たち。

ここでも暴力が暴力を呼ぶというような「負の連鎖」のようなものを感じますね。

板倉が何者なのか、前回出てきた金貸しの二人組や、「火の男」との関連はあるのか?

謎が謎を呼び、これからも楽しみです。








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